アナ
加藤アナ特集インタビュー
それは加藤アナがメインキャスターをするスポーツ番組でのことだった。
彼女は番組内で、スピードで170キロ出るバッテンティングマシンを特集するということで某球団のキャンプに収録に来ていた。
それを肌で感じようということで、加藤はピッチングマシーンから何メートルか離れたバッターボックスにバットを持って立つことになった。
マシンは勿論のこと、普通のマシンのようにベースの真ん中、ストライクゾーンへボールが正確に投げられるようにセッティングされている。
その日も加藤が立つ前に行った投球テストではいつも通りど真ん中に170キロの剛速球が何度も投げ込まれていた。
しかし、収録本番。カメラも回る中、マシンが急に狂い、剛速球がストライクゾーンを大きく反れてバッターボックスに立っていた加藤の直撃したのである。
辺りに鈍い音が響き渡る。彼女は当たった瞬間その場に蹲る。
それに慌てて周りのスタッフも駆け寄る。
ボールは加藤の腹部に当たっていた。
その後、勿論収録は中止に。
当の加藤は病院に搬送されたが内臓には幸い以上は見られず次の日から仕事をしていたと言う。
加藤:「あれは痛かったですね」
リポーター:「それはそうでしょう(笑)」
楽しげに明るい口調で話す加藤に、私も苦笑いをするしかなかった。
加藤:「あの、ボールが当たった後に私、凄い痛いのもあったんですけど、しばらくしたら気持ち悪くなっちゃって吐いちゃったんですよね。しかも白いホームベースの上にベチャベチャと(笑)何だろう、胃袋の辺りに当たったからかな。それがめちゃくちゃ恥ずかしくって。だってみんなに見られているんですよ。スタッフさんとかに」
と、加藤は自分の腹を摩りながら照れくさそうに話す。
リポーター:「ええ? 本当ですか? それは恥ずかしいというより、大変でしたね」
加藤:「いいえ。私、結構こういうボールもそうだし、お腹を殴られたりすることって昔から多いんですよね」
リポーター:「え? 本当ですか? 例えば?」
加藤:「例えば普通に小学生の頃男の子と喧嘩して、お腹を殴られたりとか。あとは、中学生の時に、凄いヤンキーみたいな女の子集団がいたんですけど、その集団に喧嘩ふっかけられてボコボコにお腹を殴られましたし」
リポーター:「へぇ……結構、ヤンチャだったんですね」
加藤:「そう。なんですかね。あと、アナになって一年目の時に、サッカー選手を練習場の隅で取材させてもらった時に、その横で練習していた人たちのボールが私のお腹にドーンとぶつかって(笑)」
リポーター:「ええ? で?」
加藤:「しばらく痛くて立てませんでしたが、三分後には何とか立ち上がって取材しましたね」
リポーター:「凄いですね。プロ魂ってヤツですか?」
加藤:「ふふ。そうそう。私が立ち上がった時に、周りの選手や観客席のお客さんから拍手されましたよ」
リポーター:「へぇ」
加藤「私、お腹には運がないのかもしれない」
と笑い飛ばす加藤であったが、普通の人間だったらこうは行かないだろうと思い、アナウンサーはこういう人間ではないと勤まらない職業ではないかと感じた一幕であった。
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